5-2 経済活動の本質

経済とは何だろうか。

一般には、

金、
市場、
企業、
投資、
労働、

などが経済として語られる。

しかし本書では、経済をもっと単純な構造として考える。

経済活動の本質とは、「欠乏の交換」である。

人間は、一人では必要なものをすべて作れない。

食料が欲しい。
住居が欲しい。
衣服が欲しい。
安全が欲しい。

つまり、人間は常に不足を抱えている。

その不足を埋めるために、人間同士が価値交換を始めた。

これが経済の原型である。

本書の視点では、経済もまた欲望ベクトルの相互作用として理解できる。

欲しいものがある。
相手にも欲しいものがある。

その交換によって経済が成立する。

つまり経済とは、「欠乏を埋めたい」という無数の欲望ベクトルが交差する場なのである。

ここで重要なのは、「価値」は絶対的ではないという点である。

砂漠では水が高価になる。
寒冷地では燃料が重要になる。
飢餓状態では食料が最優先になる。

つまり価値とは、「どれだけ不足しているか」によって決まる。

本書で言う「欠乏感度」は、経済にも深く関係している。

人間は、不足を強く感じるものに高い価値を与える。

つまり経済とは、「人間の欲望の可視化」でもある。

さらに現代経済では、生存だけではなく、

快適性、
承認、
優越感、
自己表現、

まで商品化されている。

高級ブランドは、その典型である。

服そのものの機能だけなら、もっと安価なもので十分な場合も多い。

しかし人間は、

価値ある存在に見られたい。
成功者として認識されたい。
他人との差を示したい。

という欲望を持つ。

つまり現代経済は、「承認欲求市場」でもある。

また、本書で繰り返し述べてきたように、人間は比較する。

他人より豊かでありたい。
他人より成功したい。
他人より高い地位を得たい。

この比較欲望が、経済競争を加速させる。

つまり経済成長とは、「比較による欠乏増幅」の結果でもある。

さらに現代社会では、広告産業がこの構造を利用している。

広告は、「不足」を作り出す。

まだ足りない。
もっと必要だ。
もっと良いものがある。

その感覚を脳へ植え付ける。

つまり現代経済とは、「欠乏創造システム」でもある。

ここで重要なのは、経済活動は「合理性だけ」で動いているわけではないという点である。

人間は感情で動く。

不安。
欲望。
期待。
承認欲求。

株式市場ですら、人間心理によって大きく変動する。

つまり経済とは、「人間の脳の集団運動」でもある。

恐怖が広がれば暴落する。
期待が広がれば高騰する。

これは、無数の欲望ベクトルが相互作用している状態なのである。

また、経済活動には終点が存在しにくい。

なぜなら、人間の欲望には限界がないからである。

十分豊かになっても、

もっと欲しい。
もっと安全に。
もっと快適に。
もっと自由に。

という新しい欲望が生まれる。

そのため経済は、永遠に拡大し続けようとする。

つまり資本主義とは、「欠乏を燃料として増殖するシステム」とも言える。

本書の視点では、経済とは単なる金の流れではない。

それは、

不足、
欲望、
比較、
承認、

によって駆動される、人類文明の巨大な欲望ネットワークなのである。

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