人類にとって、「家族」は最も基本的な共同体だった。
親子。
夫婦。
兄弟姉妹。
人間は長い歴史の中で、家族単位を中心に生きてきた。
生存。
子育て。
労働。
老後保障。
これらの多くが、家族によって支えられていた。
しかし現代社会では、その家族の形が大きく変化している。
未婚化。
少子化。
離婚増加。
単身世帯増加。
かつて「当然」と考えられていた家族モデルは、急速に揺らぎ始めている。
本書の視点では、その背景には、文明発展による「個人化」が存在している。
人間は、以前より一人で生きやすくなった。
収入を得られる。
社会保障がある。
インターネットで孤独もある程度緩和できる。
つまり文明が高度化するほど、「家族がなければ生きられない」という状況が弱くなる。
さらに現代では、「個人幸福」が極めて重視される。
自分らしく生きたい。
自由を維持したい。
無理をしたくない。
この価値観は、結婚や家族形成にも大きな影響を与える。
かつては、
我慢して家庭を維持する。
という価値観が比較的強かった。
しかし現代では、
不満が大きいなら別れる。
合わないなら一人の方がよい。
という判断が増えやすくなる。
これは自由の拡大でもある。
しかし同時に、家族構造を不安定化させる。
ここで重要なのは、現代人は「理想的関係」を求める傾向が強いという点である。
理想的な恋愛。
理想的な夫婦。
理想的な子育て。
しかし現実の人間関係は不完全である。
そのため、
期待と現実の差、
理想と現実の差、
が大きくなる。
その結果、関係維持コストも上昇する。
さらにSNS時代では、他人の幸福が常時可視化される。
他人の理想家庭。
他人の成功した子育て。
他人の幸せそうな夫婦関係。
すると人間は、自分の家庭を比較対象として見るようになる。
もっと良い関係があるのではないか。
もっと良い人生があるのではないか。
比較は、新しい不満を生み出す。
つまり現代社会では、「家族の安定性」よりも、「個人満足」が優先されやすくなっているのである。
また、技術発展も家族構造を変化させている。
マッチングアプリ。
SNS。
AI。
リモートワーク。
これらは、人間関係の作り方そのものを変え始めている。
将来的には、
結婚しない共同生活、
子供を持たないパートナー関係、
AIとの精神的関係、
なども増えていく可能性がある。
つまり家族は、「固定構造」ではなく、「文明によって変化するシステム」なのである。
ただし、人間が完全に孤立して生きられるわけではない。
本書で述べてきたように、人間には、
承認欲求、
親密性欲求、
愛情欲求、
が存在する。
つまり人間は、「他者とつながりたい」というベクトルを根本的に持っている。
そのため、家族の形は変わっても、「人間関係そのもの」が消えることはない。
問題は、
どのような形なら、
現代人の自由と安定を両立できるか、
である。
現代文明は、人類を個人化した。
しかし同時に、人間は依然として社会的存在である。
つまり未来社会とは、「自由化された個人」が、新しい共同体形態を模索する時代なのである。