6-3 性欲の強さも能力である

本書では、「能力」を単なる知能や技術として限定していない。

人間を動かすもの全体を、より単純な構造として捉えようとしている。

その視点から見ると、性欲の強さも、一つの能力として理解できる。

もちろん、ここで言う能力とは、「人格的に優れている」という意味ではない。

善悪の話でもない。

本書で言う能力とは、

「どれだけ強く反応し、どれだけ行動エネルギーを生み出すか」

という意味である。

本書で繰り返し述べてきたように、人間は欠乏によって動く。

そして、欠乏感度には個人差がある。

性的刺激に強く反応する人もいる。
比較的弱く反応する人もいる。

つまり性欲の強さとは、「性的欠乏感度」の強さとして理解できる。

性的価値を強く感じる。
異性に強く反応する。
親密性を求める。
快感を求める。

その結果、強い行動ベクトルが生まれる。

本書のモデルでは、この「反応性そのもの」を能力として見ている。

なぜなら、人間は強く反応する対象に対して、巨大な行動エネルギーを発生させるからである。

実際、性欲は人類文明に極めて大きな影響を与えてきた。

より魅力的になりたい。
より成功したい。
より認められたい。

その欲望が、

競争、
経済活動、
芸術、
自己装飾、

を加速させてきた。

つまり性欲とは、単なる性行為への欲望ではない。

それは「他者へ向かう強力な生命ベクトル」なのである。

ここで重要なのは、本書では「性欲が強い=優れている」と単純には言っていないという点である。

性欲が強い人は、

行動力、
競争力、
エネルギー、

を持つ場合がある。

しかし同時に、

執着、
依存、
衝動性、

も強くなりやすい。

逆に、性欲が弱い人は、比較的安定した精神状態を持つ場合もある。

つまり本書は、善悪評価ではなく、「ベクトル強度」の問題として見ている。

また、性欲の方向性は、人によって異なる。

恋愛へ向かう人。
性的快感へ向かう人。
承認へ向かう人。
芸術へ転換する人。
仕事へ転換する人。

つまり性欲は、さまざまな文明活動へ変換され得る。

実際、歴史上の多くの創造活動には、性的エネルギーの転換が関与している可能性がある。

これは精神分析学でも古くから議論されてきた。

本書では、それをより単純化して、

「強い欲望ベクトルは、別方向へも巨大エネルギーを供給できる」

として理解している。

さらに、本書の視点では、「世界へ強く反応する能力」そのものが重要である。

何にも反応しない。
何にも興味がない。
何も求めない。

この状態では、行動エネルギーは生まれにくい。

逆に、性欲が強いということは、「他者」「快感」「魅力」に対して脳が強く反応している状態である。

つまりそれは、「世界への反応性」が高いとも言える。

本書では、人間を単純化して理解しようとしている。

その中では、

知識欲、
承認欲求、
性欲、
権力欲、

はすべて、「人間を動かすベクトル」として扱われる。

そして性欲もまた、その中の極めて強力な一つなのである。

つまり性欲の強さとは、本書のモデルでは、「生命ベクトル強度」の一形態として理解できるのである。

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