あとがき

「美しい」とは何か。この問いは、一見すると単純ですが、掘り下げれば掘り下げるほど奥行きを持ちます。本書では、日本語の「美しい」という言葉から出発し、そして動物としての本能と人間社会の文化的影響という二つの視点から、美を考えてきました。

執筆を進めるうちに強く感じたのは、美の感覚には普遍性と相対性が共存しているということです。若さや健康、左右対称性や比率といった本能的な基盤は、誰にとっても共通する美の源泉です。しかし同時に、文化や時代はその基盤の上に多様な価値観を付け加えます。ふくよかさが美とされた時代もあれば、スリムさが理想とされる時代もあります。日焼けした肌が魅力的とされる地域もあれば、色白が美しいとされる文化もあります。

この二重構造を意識することは、私たちが「なぜ美を求めるのか」を理解するために不可欠です。美を求める心は、単なる趣味や娯楽ではなく、生きることそのものに根ざした営みです。そして、そこに文化が加わることで、美は人間独自の深みを持つようになります。

本書を読み進めながら、読者の皆さんが「自分にとっての美とは何か」を考えるきっかけになれば幸いです。そして、その問いを通じて、人間が生きることの意味や価値についても思いを巡らせていただければと思います。

最後に、この本は「美」を完全に定義するためのものではありません。むしろ、美という現象の複雑さを整理し、普遍性と多様性の両面から理解するための試みです。美をめぐる問いは尽きることがありません。だからこそ、私たちは繰り返しこのテーマに立ち返り、新しい発見を重ねていくのでしょう。


美とは何か ― 本能と文化がつくる二重構造
著者 竹川 レオナ
発行者 ララレオナ出版
発行日 2025年10月4日

 の目次へ