第6章 歴史による美意識の変遷

1. 戦後日本における「ふくよかさ」の価値

戦後直後の日本は、食糧が乏しく、多くの人がやせ細っていました。そのような社会状況では、ふくよかさが「豊かさ」「健康」「余裕」の象徴とされました。 人々は、ふっくらした顔や体型を「立派な人」と表現し、単に美しいだけでなく社会的地位や安定感と結びつけて評価しました。私の祖母の世代が「やや太った人」を「ご立派な方」と評したのも、その価値観の表れです。


2. 高度成長期から現代への移行

経済成長とともに飢えが遠ざかり、飽食社会へと変わるにつれ、美意識も逆転していきました。1970年代以降、スリムな体型が「洗練」「自己管理」「若さ」と結びつき、次第に美の基準となりました。特にファッションモデルや芸能人が提示する細身の体型が、社会的に理想とされるようになったのです。


3. 現代におけるスリム志向とその影響

現在の日本では、過度に痩せた体型が「美しい」とされる風潮があります。しかし、これは必ずしも健康と一致しません。栄養不足や摂食障害を引き起こす危険性もあり、社会がつくりだす「後天的な美の基準」が必ずしも本能的な「普遍的な美」と一致しないことを示しています。


4. 西洋における変遷との比較

西洋でも歴史的に美意識は変化しています。

  • ルネサンス期:ふくよかな体型が豊かさと美の象徴。ボッティチェリやルーベンスの絵画がその例です。
  • 20世紀以降:スリムで日焼けした体型が流行し、健康美や活動性のシンボルに変化しました。

この流れは、日本の戦後から現代への変化と対比させることができます。


5. 美と「立派さ」「地位」との関係

歴史の中で、美意識はしばしば「社会的な価値」と結びついてきました。

  • 戦後の「ふくよかさ=立派さ」
  • 現代の「スリムさ=自己管理・意識の高さ」
    これは、美が単に生物学的な本能だけでなく、社会的な地位や評価と絡み合って形成されることを示しています。

まとめ

美の基準は歴史とともに大きく変化します。

  • 普遍的な美=健康や若さのサイン
  • 後天的な美=その時代の社会条件や価値観の反映

この二層のバランスが、いつの時代も人々の美意識をつくってきたのです。


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