第1章 なぜ人はその方向へ動くのか

ふしぎな行動の理由

私たちは日々、無数の選択をしています。あるときは勇気を出して一歩踏み出し、あるときはためらって立ち止まり、またあるときは後悔しながら振り返ります。

なぜそんな違いが生まれるのでしょうか。「性格だから」と片づけることもできますが、実はもっと構造的に説明できるのです。


行動を動かす「矢印」

人の行動を決めるのは、さまざまな方向を向いた矢印です。

  • もっと遊びたい
  • 成功したい
  • 怖い思いをしたくない
  • 認められたい
  • 安心していたい

これら一つひとつが、心の中で働く矢印なのです。


矢印が合わさるとき

矢印はひとつではありません。たくさんの矢印が、同時にあなたを引っ張っています。

  • 矢印が同じ方向に向けば、力強く動き出します。
  • 逆を向けば、動けなくなります。
  • 斜めに交われば、妥協や中途半端な行動になります。

つまり、行動とはひとつの矢印ではなく、矢印たちの合成結果なのです。


日常の例

  • 試験前の学生
    「遊びたい」という矢印と「勉強しなきゃ」という矢印がぶつかり、机の前でスマホを見てしまう。
  • 健康を気にする人
    「ケーキを食べたい」という矢印と「健康でいたい」という矢印が逆を向き、半分だけ食べるという妥協になる。
  • 告白を迷う人
    「想いを伝えたい」という矢印と「拒絶されたくない」という矢印がせめぎ合い、ためらいを生む。

行動の秘密は「矢印の和」

このように考えると、人間の行動は決して謎ではありません。強い意志でもなく、偶然でもなく、「矢印たちの和(合成)」が行動をつくり出しているのです。

「なぜ自分はこうしたのか」と悩むときも、実際には心の中の矢印が示した方向に従っただけなのです。


次の問いへ

では、そもそも「矢印」とは何でしょうか。その成り立ちと意味を知らなければ、この比喩はただのイメージに過ぎません。

次の章では、数学や物理学から始まった「ベクトル(矢印)」という概念が、なぜ人間の行動を説明するのに役立つのかを探っていきます。


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